婦人病

更年期―日本女性が語るローカル・バイオロジー: マーガレット ロック Margaret Lock 江口 重幸 北中 淳子 山村 宜子: 本

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更年期―日本女性が語るローカル・バイオロジー

更年期―日本女性が語るローカル・バイオロジー

出版社 / 著者からの内容紹介

近年、更年期を、閉経以降の女性ホルモン“欠乏”と関連づけられている西洋医学的概念「メノポーズ」と基本的に同一視し、医療化する趨勢が強まっている。著者は、医療化が始まる直前の80年代に、当時更年期に該当していた日本女性を対象として医療人類学的調査をおこなった。そこでは意外にも、北米で言うメノポーズと日本の更年期との間に、身体症状の明白な違いがあることが示された。著者は〈語り〉の分析をとおして、「メノポーズ=更年期」という図式や、「暇人の病」など、更年期に絡みつく神話をねばり強く解体してゆく。
本書がとりあげている“昭和一桁”世代の女性の語りから浮かび上がるのは、混乱期に生まれ、世界観の激変の中をひたむきに生きてきた女性たちの個人史、そしてあくまでその個人史と結びついた「更年期」の自覚症状の出現である。著者は「異常とされるのは更年期自体ではない。……更年期は圧倒的に社会的なカテゴリーなのである」と指摘する。
更年期というカテゴリーの独自性を十二分に示したのち、後半で著者は、「もし更年期を日本の歴史と文化の産物と見るのなら、なぜメノポーズを西欧文化の産物と考えてはいけないのだろうか?」と問いを逆転させる。そして西洋の医学史・文化史をたどる周到な議論によって、「メノポーズ」という概念から“生物学的普遍性”の御墨付きを引き剥がすのである。これを受けて最終章は、メノポーズに対するホルモン療法のリスク‐ベネフィットを再考し、治療方針に関する具体的な提言をおこなっている。この事例はまた、ローカル・バイオロジーの視点からの西洋医学的治療のリスク‐ベネフィットの再検討という、普遍的な課題の存在を示唆している。

内容(「BOOK」データベースより)

更年期=メノポーズ?両者の違いからバイオロジーの地域性を抽出し、それを作り出している文化的・社会的文脈を、日本女性の語りの集積により浮かび上がらせる。医療人類学研究の真骨頂。

内容(「MARC」データベースより)

更年期=メノポーズ? 両者の違いからバイオロジーの地域性を抽出し、それを作り出している文化的・社会的文脈を、日本女性の語りの集積により浮かび上がらせる。医療人類学研究の真骨頂。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ロック,マーガレット
英国ケント州生まれ。カナダ在住。マッギル大学医療社会学部・文化人類学部教授。カナダ・ロイヤル・ソサエティ会員。日本と北米をおもなフィールドとして、きわめて質の高い医療人類学的研究を長年精力的に続けている。その功績により2005年、カナダ最高の学術賞であるキラム賞を受賞。『更年期―日本女性が語るローカルバイオロジー』によってもステイリー賞(J.I.Staley Prize)など複数の賞を受けている

江口 重幸
1951年生まれ。1977年、東京大学医学部医学科卒業、現在は東京武蔵野病院(教育研究部長)。精神科医、文化精神医学、医療人類学、力動精神医学史に関心をもつ

山村 宜子
翻訳家。1946年生まれ。国際基督教大学卒

北中 淳子
1970年生まれ。シカゴ大学修士、マッギル大学博士課程在籍、慶應義塾大学文学部助手。専門は医療人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次

科学的言説と女性の老化
第1部 日本―成熟と更年期(人生の変わり目―定まらない定義
確率からみた更年期
あきらめ、抵抗、満足―成熟という語り
現代の病理 ほか)
第2部 「回避すべき時期」から「欠乏症」へ(メノポーズはどのようにつくられたか
自然=本性に反して―メノポーズは老いと衰えの前触れ)
加齢=老化の政治学―不死の閃光